「怒る」と「叱る」は違います。この点を理解しなければ、とんでもないことになってしまうのが、今の世の中かもしれません。
「自分の損得のために」が「怒る」であり、「相手の成長のために」が「叱る」という行為です。つまり、「怒る」は自分が困りたくないから、不利益を被りたくないからという理由の自分本位型コミュニケーションであり、「叱る」は改善提案や相手の成長を促すことが目的の相手本位型コミュニケ―ションです。当然、「怒る」より「叱る」が人間関係を良好にさせます。
日本人は褒めることと同じくらい叱ることが下手だといわれています。言わなくてもわかるだろう的な文化、面と向かって叱ることの照れが大きいのでしょう。しかし、心配は要りません。次の4点に気を付ければ、上手に叱ることができるようになります。
同じ事象でも、機嫌が良かった昨日は叱らないで、機嫌が悪かった今日は叱るでは、叱られる方は迷うばかりです。結局、言うことを聞いてくれなくなります。機嫌で叱るのは止めましょう。
一番いい叱り方は、目の前の事象に理由を付けて叱ることですが、我々はつい過去の出来事を引っ張り出して叱ってしまいます。「前から言おうと思っていたけど」「この際だから言うけど」は、その典型です。叱られる側にとって、過去の出来事はすでに終わっています。蒸し返されることこそ嫌なものはありません。その時に叱れなかったものは、今、叱ってはいけないのです。
何事も原因を追究することは必要です。原因を明確にしなければ、「反省」を促せないからです。しかしながら、「なんで」という原因追求は1回で十分です。アメリカのプロスポーツでは、試合後、必ず選手にビデオを見せて「なんでこういうプレーをしたのか」とミスや失敗を追求し、反省させます。しかし。1回しかそのビデオを見せません。なぜなら、何度もミスや失敗のビデオを見せると、そのシーンが脳に刷り込まれ、また同じミスや失敗を繰り返してしまうからです。叱り方も同じで、何度も原因を追究すると相手を追い込むことになります。「なんで」は1回だけにしてください。
相手を叱る場合、「絶対」「いつも」「必ず」「100%」という強い表現を使ってしまう傾向にあります。しかし、よく考えてみてください。世の中に「絶対」「いつも」「必ず」「100%」はないのです。これらの強い表現は決め付け以外の何ものでもなく、逆効果です。強い表現は使わずに、別の表現で叱る工夫をしてみてみましょう。
叱り上手になれば、コミュニケ―ションの達人に一歩近づけまず。