入社3年目までに会社を辞めてしまう若者が増えているといいます。主な理由のひとつとして、上司からの「パワハラ」が挙がっています。問題は、「パワハラ」をしているとされる側が「パワハラ」を意識していないことと、「パワハラ」を受けているとされる側がうまくかわせないこと。怒られ慣れしていないといえばそれまでですが、双方に問題があると言わざるを得ません。
今回は「パワハラ」を無意識にしてしまっている側を取り上げます。昔は当たり前だったことが、今や「パワハラ」と認定されていることを考えれば、他人ごとではないですし、コンプライアンスのことを考えれば、必要以上に気を付けなければいけません。
私はこれまで様々なジャンルにおけるスーパースターたちに接する機会に恵まれました。共通して感じたことは、スーパースターになればなるほど、謙虚で腰が低いということです。それはどういうことかというと、決して「上から目線」で人を見ないということなのです。「パワハラ」は、知らずに「上から目線」で部下を見てしまうことから派生しているともいえるでしょう。
「コーチ」という言葉があります。(運動競技の)指導者、(学習指導などのために雇われる)家庭教師の意味で使われますが、第一義の意味は“馬車”です。「コーチ」というブランドのトレードマークが馬車である理由がここにあります。どういうことかというと、コーチは「指導を受ける者を運ぶ道具(乗り物)」であるべきで、決して馬車の上からムチでビシビシ馬を叩く者ではないのです。
では、「上から目線」ではないとしたら、どういう目線で見たらいいのでしょうか。女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」で成功した佐々木則夫・元監督はこう言っています。
「いつでも選手と同じ目の高さで、“横から目線”で接するように心がけていました。コーチが馬車なら選手は何だと思いますか。答えは“乗客”です。間違っても選手を“馬”と考えてはいけません。コーチ、つまり、指導者の仕事とは、選手を馬のようにムチで叩いて走らせるのではなく、乗客である選手たちを目標の地まで送り届けることです」
選手(部下)・イコール・クライアントという考え方が「横から目線」といえるでしょう。選手(部下・子供など)が言われることができなかったり、やる気が感じられなかったりしても、ただ叱るのではなく、「なぜそのようになっているのか」をともに考える。そして、彼らの「したいこと」を見つけ、それをしたくなるように手助けをする。「横から目線」の指導者というのは、まさにこういうことができる人で、こういう人が増えれば増えるほど、「パワハラ」が減少していくことは間違いないでしょう。