下を向いて弁当を食べるな

執筆者:setoguchi

 アメリカ人は、本当に野球に詳しい。とくに作戦面まで評論家のように自論を語れる。野球=ナショナル・パスタイムと言えばそれまでだが、これにはちゃんとした理由がある。

 それは、ネットだ。

 野球が考えだされた当初から、バックストップと呼ばれるバックネットはあったが、それ以外のネットはなかった。つまり、観客は強烈なファウルライナーから自分で身を守るしかない。だから、1球たりともボールから目を離すことはできず、集中して野球を見るしかなかった。

 そりゃ、野球が詳しくなる。打者によって(もしくはカウントによって)、投手によって(もしくは球種によって)自分の方向へ打球が飛んでくる確率が変わるのだから、真剣に野球を見て、勉強する。

 ちなみに、球場にグラブを持っていくのは、ファウルボールを捕るためであると同時に、自分を守るため、捕った瞬間にヒーローになるためだ。

 かたや、日本はどうか? 最初からネットで守られているため、ボールから目を離しても心配ない。下を向いて弁当を食べても安心なのだ。

 1球、1球への集中力の違い。この差が埋まれば、日本のファンのレベルがアメリカのファンのレベルにもっと近づいていく。

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