たびたびスランプやトラブルに見舞われながらも、そのたびに不死鳥のごとく復活を遂げているプロゴルファー、タイガー・ウッズ。
ウッズの強さの源は、ドライバーの飛距離でもパターの技術でもなく、土壇場での圧倒的な勝負強さにあります。
その勝負強さの秘密は、彼が幼少期から続けてきた「ライバルの成功を願いながら戦う」習慣にありました。
2005年に行われたアメリカンエキスプレス選手権でのこと。最終日、ウッズはアマチュア時代からのライバル、ジョン・デーリーと優勝争いを繰り広げていました。試合は18ホールでは決着がつかず、プレーオフへもつれ込みます。まずはウッズが決め、デーリーの番。デーリーがバットを外せば、ウッズの優勝です。
果たして、デーリーは外しました。その瞬間、テレビカメラはウッズの顔を抜きましたが、ウッズは悲しそうな顔をしていました。
試合後の優勝インタビューで、「なぜ悲しそうな顔をしていたのか?」と聞かれたウッズは、「ジョンのパットが外れたことが悲しかった」と静かに語りました。
他人の成功を願う。それは単に「円満な人間関係を築くことができる」のみならず、自身のパフォーマンスを最大限に高める行動であることが、脳科学的に証明されています。
脳神経外科医・林成之博士ら多くの脳科学者たちは、人間の脳は「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」という3つの本能が備わっており、これらの本能に逆らうことを考えると、脳のパフォーマンスが落ちると述べています。「ライバルの成功を願いながら戦う」ことでウッズは、自分自身のパフォーマンスをも最高の状態に高めていたのです。
「相手が失敗しなければ勝てないのは二流」と言ってはばからないウッズ。ライバルは敵ではなく、自分を高めてくれる大切な存在であり、相手の失敗を願っているようでは、良いパフォーマンスはできないとウッズは言っているのです。これは、ビジネスでも同様ではないでしょうか。